漆器から考える

September 5, 2024

僕が骨董屋から家具屋になったきっかけは、骨董品を買う時に、併せて30〜60年代のデザイン雑誌や建築のものもたくさん買い集めていたことから始まる。古いイギリスの家具、ビクトリアンやエドワーディアン、はたまたジョージアンのオークの骨董家具をイギリス中から買い集めた。

1980年代初めから、少しずつアール・デコや50年代のモダンな家具に興味がいくようになった。色々調べると近代、モダンという概念のデザインは1930年代のアール・デコのデザインから始まった様だし、コンテンポラリー、現代アートは1950年代に始まった様だと分かってきた。

そしてその後は「なにが美しいか?」も様々な視点や思想や価値観によって異なることを理解した。すると目の前が開けた様になった。

その頃、アール・デコのデザインに影響されて様々なものが生まれた。僕がこだわったのはアイリーン・グレイの作った家具やル・コルビュジエの空間だった。そしてアール・デコのシンプルで潔い、モダンな思想の家具や絵画を集めている時に、漆の屏風/スクリーンが気になった。漆の黒い輝きは、プラスチックにはない存在であった。

そこでイデーという理念、概念を超えた新しい家具のブランドを立ち上げることになった時に、この漆の一連の家具を作ろうと思った。

漆の輝きは他には無い独特さで、特に輪島塗りや越前漆器や山中漆器は深い輝きを持っていた。歴史のある漆と近代のものであるアール・デコを合わせたアイリーン・グレイの家具にはどの様な意味があるのかと深く考えた。同時に必要のないものは全て諦めてミニマルという概念のデザインは僕にとってはすごく魅了的だった。

イデーの草創期 #6 ▶

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